anyの出番、everywhereの領分

Balanced English Corpus — 1億6,172万文の全数走査

any の出番、everywhere の領分

「some は肯定文、any は疑問文・否定文・if 節」。この通説がどこまで当たるのかを、 23.8億語のコーパスの全文にあたって数えた。ついでに、anywhere と everywhere が どう違うのかも測った。サンプリングなし・全件実測。

161,718,053走査した文
2,864,497,496トークン(記号込み)
16,608,589集計した any/some/every 系の語
11レジスター(字幕・会話・小説・報道・百科・学術・ウェブ)
通説どおり

否定文の any

否定語が同じ節の左にある=本当に否定のスコープに入っている場合、 88.5% が any。some 側 105,947 件に対し any 814,316 件。

半分だけ

疑問文の any

疑問文全体では any は 57.8% しかない。 Do you〜 / Is there〜 型に絞れば 71.7% まで上がるが、 Would you〜 / Can I〜 では some が 8割超

通説の外

素の肯定文の any

any の 26.0%591,483 件)は 否定でも疑問でも if でもない。「どんな〜でも」の自由選択と、 in any case / at any time 型の定型。

仮説はほぼ当たり

anywhere と everywhere

否定文を全部捨てて肯定文だけで比べると、決め手は法助動詞だった。 can / could があれば anywhere が 81%、 無ければ 30%。同じ動詞でも足すだけで反転する。

some / any — 通説の答え合わせ

any 2,277,634 件 / some 3,935,261 件

まず、any 系・some 系・every 系の語を1件ずつ「どんな文脈に立っているか」で分類した。 分類は排他で、優先順位は 否定 > 疑問 > 条件 if > 準否定 > 法助動詞 > 命令 > 最上級 > 素の肯定。 下の図はそれを3つにまとめたもの。

語ごとの文脈プロファイル

各語の全出現を100%としたときの内訳。数値は%。

非肯定文脈(否定・疑問・条件 if・準否定) 法助動詞・命令 素の肯定文
準否定=than / hardly / rarely / before / without / too〜to / doubt など、 否定的な含みで any を許す語。anymore が 97% 非肯定なのは、この語がほぼ純粋な否定極性語だから。

ひと目でわかるのは、any 系と some/every 系がきれいに裏返しだということ。 そして any 系の中でも anything(78.1%)が最も「否定・疑問・if 専用」に寄っていて、 any 本体(66.3%)はいちばん緩い

8分類の内訳

行内の%。濃いほど、その語がその文脈に多く出る。

「準否定」は否定語ではないが否定的な含みを持つ環境。 ever が最上級 13.3% と高いのは the best film I've ever seen 型。

1. 否定文 — 通説は正しい。ただし「文に not がある」では足りない

「否定文では any」は強く成り立つ。ただし測り方で数字がかなり変わる。

否定文脈での any : some

「同じ節の左」= not / never / no / without などが同じ節の中で any より前にある、 つまり本当にスコープに入っている場合。「文中のどこかに」=節をまたいで否定語があればよい、というゆるい判定。

差は 88.5% と 74.6%。この 14ポイントの落差が「否定文の some」の正体で、 中身はどれも否定のスコープの外にある some だった。

media_interviewI'm not some skinny little 14-year-old kid.
— 否定されているのは「some kid である」ことで、some 自体は否定の中にいない

opensubtitlesSome people don't like it.
— some が not より前。scope 外なので some のまま

じっさい some は「右側に否定がある」ケースが 10.4% あり、 「同じ節の左に否定がある」ケース 2.6% の 4倍。教室では 「not より後ろなら any、not より前なら some」と言ったほうが正確になる。

2. 疑問文 — ここが通説のいちばん弱いところ

疑問文全体で見ると any 57.8% : some 42.2%。「疑問文では any」と言い切るには弱すぎる。 ただし疑問文といっても中身が違う。文頭2語で分けると、はっきり2つの世界に割れた。

疑問文の型ごとの any : some

文頭2語別。バーは any の取り分。

上段が情報を求める疑問、下段が申し出・勧誘・提案。合計行には、件数が少なくて表に出していない4型(Are we / Is that / Have they / Have we)も含む。

情報を求める疑問(Do you have any…? Is there any…?)では any が 8割前後。 申し出・勧誘(Would you like some…? How about some…?)では some が 8〜9割。 ここまでは教科書どおりだが、実際の決め手は「疑問文かどうか」より「どの動詞か」だった。

疑問文で、直前の他動詞の目的語になっている場合

〈V + any/some …?〉の形に限定。位置が動詞の直後なので、従属節の紛れが入らない。

この条件下の合計は any 84,724 : some 47,886(any 63.9%)。

media_interviewDo you have any idea at this point why the ship went down?

media_interviewOr do you have some of that fear, as well?
— 「その恐れの一部を、あなたも持っているのでは」。存在を前提にしている some

fictionDo you want something else to eat before you go home?

fictionDo you need anything else before I go?

教室で言うなら ——「疑問文なら any」ではなく、 have / know / see / hear(あるかどうかを尋ねる動詞)なら any、 want / buy / take(相手に差し出す・受け取らせる動詞)なら some」。 数字は want で some 89.9%、buy で 82.4%、have で any 76.5%、know で any 83.2%。

-thing / -one / -where では通説が崩れる

同じ疑問文の型で比べると、複合語では any 側の優位が消える。

典型的な yes/no 疑問文での any 側の取り分

Do you / Did you / Is there / Are there / Have you / Can you / Would you / Can I など、 同じ17の文頭パターンで揃えて比較。

Do you want something?Do you want anything? と同じくらい普通、 Did you go somewhere? はむしろ anywhere より多い。 「疑問文の some は特別な場合だけ」という説明は、複合語には当てはまらない。

3. if 節 — any 63.5%。some も3分の1ある

条件節では any 138,059 : some 79,408 で any 63.5%。 否定文ほど強くない。分かれ目は「その存在を前提にしているかどうか」だった。

media_interviewIf you have any questions, send them to us at toptips@cnn.com.
— 質問があるかどうかは未定。不特定

media_interviewIf you have some old electronic gadgets lying around, why not recycle them?
— 「(きっとある)古い機器」。あることを見込んで話している

media_interviewIf they have some new information which has not been disclosed, that could conceivably work.

4. 否定でも疑問でも if でもない any が、4分の1ある

any の 26.0%(591,483件)は素の肯定文に出る。中身は2つ。

  • 自由選択の any(「どんな〜でも」)— このゾーンの any は 67.2% が単数名詞を伴う。 any 全体(55.3%)よりさらに単数寄り。
  • 前置詞に固まった定型 — 素の肯定の any は 42.4% が前置詞の直後 (in 8.6% / for 8.3% / of 7.1% / at 4.7%)。in any case・in any way・at any time・at any rate・ at any moment・for any reason。

media_interviewBarack Obama knows that any country that out teaches us today will out-compete us tomorrow.

media_interviewDay-to-day fluctuations are going to take a toll on any company that relies on fuel.

media_interviewThey have fought unions harder than just about any company in America.

media_interviewHe does not aspire in any way to be famous.

素の肯定の any に付く名詞トップ: time 20,830 / case 13,220 / kind 11,834 / medium 8,144 / moment 5,649 / number 5,517 / rate 5,135。 ただし medium は学術論文の CC-BY ライセンス文 “reproduction in any medium, provided…” の定型で、コーパス由来のノイズ。

5. レジスターで通説の当たり方が変わる

any のうち「否定・疑問・if 節」が占める割合

100万トークンあたりの出現数も併記。話し言葉=字幕・放送インタビュー・自然会話、 学術=PMC 論文・arXiv 抄録。

話し言葉では通説がほぼ当たる(69.8%)が、学術英語では 36.5% まで落ちる。 論文の any は「どんな〜でも」の自由選択(any such system, at any time point)が主で、 否定・疑問の道具ではない。入試の論説文で any を見たとき、 反射的に「否定文かな」と探させるのは、実はあまり効率がよくない。

anywhere と everywhere ―― 肯定文だけで比べる

肯定文中 anywhere 49,792 件 / everywhere 81,099 件

否定文で anywhere が出るのは当たり前なので、そこは捨てる。 否定語が左にある文・疑問文・if 節・準否定(hardly / before / than …)を全部落として、 「どちらの語でも言えたはずの文」だけを残した。残ったのは anywhere 49,792 件 ・ everywhere 81,099 件(anywhere 38.0%)。 この中で何が二つを分けているのかを見る。

1. 最大の分かれ目は法助動詞だった

肯定文を、文の型でさらに割る

否定・疑問・条件・準否定はすべて除外済み。

「その他」は不定詞・分詞・名詞句だけの断片など、定形動詞が取れなかった文。

肯定文の中でも、法助動詞がひとつ入るだけで anywhere の取り分が 29.8% から 80.8% へ跳ね上がる。 逆に過去形の文では anywhere は 18.8% しかない。 起きたことを語るときは everywhere、起こりうることを語るときは anywhere。

どの法助動詞と組むか

法助動詞つきの肯定文を 100% とした内訳。

anywhere は can / could に集中(合わせて 70.9%)。everywhere の最多は will。

同じ「法助動詞つき」でも中身が違う。anywhere が乗るのは can / could = 可能・許可(「行こうと思えばどこへでも」)、 everywhere が乗るのは will = 予測(「そこら中に現れるだろう」)。

media_interviewThere is no way that the president of the United States can go anywhere as just a sports fan.

media_interviewGiven the shuttle range he could be anywhere in the world.

opensubtitlesKahn's extermination squads will be everywhere, hunting.

2. 同じ動詞でも、法助動詞を足すだけで振れる

動詞の意味の差なのか、法の差なのか。動詞を固定して比べれば分かる。

動詞を固定して、法助動詞のあり・なしで比べる

数字は anywhere 側の取り分。括弧内は anywhere 件数 / 合計。

同じ動詞で比べているので、動詞の意味は打ち消されている。残った差が法助動詞の効果。

happen は素の肯定文なら everywhere が 78%、法助動詞がつくと anywhere が 95%。 be は 15% → 87%。動詞を固定しても、法助動詞ひとつでほぼ反転する。 ここが本体だと言ってよい。

ただし look(15%→40%)と see(23%→57%)は、法助動詞をつけても everywhere 寄りのまま。 法助動詞は差の大部分を説明するが、全部ではない。

3. 法助動詞を外して、素の肯定文だけで動詞を並べる

いちばん条件を揃えた比較がこれ。法助動詞も命令も最上級もない、ただの肯定文だけを残して、 動詞ごとに anywhere の取り分を出した。ついでに「意志的(自分から働きかける)/非意志的 (勝手に起きる・入ってくる)」で色を分けてある。

素の肯定文での動詞ごとの取り分

点ひとつが動詞ひとつ。横位置=anywhere 側の取り分。太い縦線は各群の中央値。

意志的(主語が意図してする) 非意志的(勝手に起きる・入ってくる) どちらとも決めにくい
0% 255075 100%
左端=その動詞では everywhere しか使われない。素の肯定文で合計100件以上あった54動詞。 点にカーソルを置くと実数が出る。罵倒語4語は意志性の判定になじまないので外した。

まず目につくのは全体が左に寄っていること。法助動詞のない肯定文では、 ほとんどの動詞で everywhere が勝つ。anywhere が過半を取る動詞は sit 86% ・ work 70% ・ move 65% ・ get 65% ・ live 62% ・ put 61% ・ go 56% など、 「一箇所を占める」動詞に限られる

意志性の中央値は 意志的 41.6% ・ 非意志的 10.3%(31ポイント差)。 ここでも直観は数字になる。だが両端の混じり方は変わらない。

everywhere 端(anywhere 25%未満)に並ぶ 28語

意志性が真の変数なら、この端には非意志的な動詞しか来ないはず。実際は 9語が意志的。

see と look を、素の肯定文だけで直接ぶつける

数字は anywhere 側の取り分。低いほど everywhere を選ぶ。

「意志的に見に行く」search / check / look のほうが everywhere に強く寄る。 非意志性で説明できる向きではない。

4. 素の肯定文の anywhere は、じつは「範囲」を言っている

直後に来る語(法助動詞なしの肯定文)

anywhere の直後は前置詞、everywhere の直後は句読点。

法助動詞のない肯定文の anywhere は、38.8% が前置詞を従える (from 15.4% / in 13.3% / between 4.3% / near 3.5% / on 2.3%)。 対する everywhere は 54.6% がそこで文が切れる。 つまり素の肯定文で anywhere が生き残っているのは、 「どこへでも」ではなく「〜から〜のあいだ」「〜の中のどこか」と範囲を切る用法だった。

media_interviewSince the fruitfly has anywhere from 96 to 124 miRNAs, that means it has 8,000 to 12,000 target sites.

media_interviewIn our population, the test takes anywhere from 2 to 3.5 hours.

media_interviewNew pictures of the hooker in the Eliot Spitzer scandal are everywhere.

media_interviewThe insidious presence of the army is everywhere here.

動詞ランキングで cost・last・range が anywhere 側の端に来ていたのも、 意味の問題ではなくこの定型(costs anywhere from $3 to $5)のせい。 範囲用法を除くと、素の肯定文に残る「純粋な自由選択の anywhere」はさらに薄くなる。

5. 受動態では差がゼロ、意志性では差が出るが決め手ではない

直前の支配動詞の態(肯定文のみ)

「動詞なし」=直前5語以内に動詞がない。people everywhere / blood everywhere のような 名詞の後置修飾、Everywhere I go 型の文頭、体言止めなど。

受動態の率は anywhere 2.9% / everywhere 2.9% で完全に一致。 文法上の受動では差は出ない。効いているのは態ではなく、be 動詞での言い切り(10.5% 対 16.5%)と、 そもそも動詞に支配されない用法の多さ(41.7% 対 50.9%)。

ここまでを一つの軸にまとめると、能動/受動でも意志/非意志でもなく、 ∃(どこか一つを選ぶ)と ∀(場所の全体)になる。

  • 一回の出来事が一箇所で成立する → anywhere。 座る・住む・働く・置く・行く(意志的)に加えて、 起こる・襲う・着地する(非意志的)も同じ側。ただし素の肯定文ではそれも弱く、 法助動詞という足場があって初めて前面に出る。
  • 一つの事態が全域に及ぶ、または全域を当たる → everywhere。 散らばる・広がる・血が出る・ある(非意志的)に加えて、 探す・見て回る・確認する(意志的)も同じ側They can't look everywhere.
「能動=anywhere、受動=everywhere」と感じる理由。 行き先・置き場所・住む場所を自分で決める行為は、選ぶ先が一つで足りる(∃)。 見える・聞こえる・散らばっているは、複数の場所にまたがって成り立つ(∀)。 意志性と ∃/∀ がもともと強く相関しているので、意志性のほうが目に入る。 さらに、行為を語る文には can / could が付きやすい ―― これが最大の増幅装置になっている。

6. レジスターも肯定文だけで見直す

肯定文のなかでの anywhere : everywhere

各レジスターの肯定文だけを母数にしている。

小説で anywhere が 29.6% と最も低いのは、小説の地の文が過去形だから (過去形では anywhere 18.8%)。逆に百科(Wikipedia)で 53.8% と逆転するのは、 can be found anywhere in the region のような可能の記述が多いため。

おまけ ―― 直観がさらに強まる仕組み

ここまでは肯定文だけを見てきたが、実際に英語を読むときは否定文も混じる。 その混じり方が動詞によってまるで違う。

その動詞と結びついた anywhere / everywhere のうち、肯定文脈だった割合

everywhere はどの動詞でも 8〜9割が肯定文。anywhere は動詞によって 18〜65% と大きく振れる。

see … anywhere の 74.5% は否定・疑問I don't see him anywhere.)。 肯定文で「見える」と言うときには everywhere しか目に入らないので、 「受動的な知覚は everywhere」という印象がさらに強まる。

測り方と、信用してよい範囲

  • 全数走査。1億6,457万文すべてを1パスで読み、品詞注釈(spaCy en_core_web_sm)の token 列から機械的に判定した。サンプリング・AI 判定・外部 API は一切使っていない。 統計からは gutenberg(コーパス側で統計除外扱い)を外し、1億6,172万文を母数にしている。
  • 否定の判定は2段階。「同じ節の左」(節境界=句読点・等位接続詞・従属接続詞・関係詞)と 「文中の左のどこか」を別々に数え、両方を出した。前者が scope に近い。
  • 疑問は文単位(文末の ?)。付加疑問(…, isn't it? …, huh?)は 別扱いにして疑問から外した。それでも従属節の中の some を疑問文扱いしてしまう分は残るので、 「直前の他動詞の目的語」に絞った表を本命の証拠として置いてある。
  • ALL-CAPS の落とし穴。字幕は大文字書きが多く、spaCy は DON'T を 1トークンにしてしまう。n't で終わる語形をすべて否定語として拾う処理を入れてある (入れる前は否定が約1ポイント過小だった)。
  • コーパス由来のノイズは明示する。素の肯定の any に付く名詞 4位の medium(8,144件)は学術論文のライセンス定型文。数え落としではなく、 コーパスの構成が出た数字。
  • 「準否定」の中身は than / as…as / hardly / rarely / before / until / only / too…to / hard(difficult, impossible)…to / doubt / deny / refuse / fail / prevent / wonder。 too と hard 系は間に to がある場合だけ数えた。