balanced corpus 23.8億語 · 全数走査
形容詞と同じ形のまま副詞に使う「裸形副詞」は、実際どれだけ使われているのか。手元の 23.8 億語バランスコーパスを 1 文残らず走査して、63 ペアぶんの実数・レジスター差・共起動詞を出した。
意味の重なる 32 ペアを合算すると、裸形が選ばれる率は話し言葉 7.4%・小説 5.6% に対し、百科事典 0.9%・学術論文 0.5%。「口語的」という説明は数字で裏が取れる。
do it wrong は 99%、buy cheap は 92% が裸形。いっぽう drive slowly は 73%、move quickly は 95% が -ly 形。「slow でも slowly でもいい」は成り立たない。
裸形 wrong の 73%、cheap の 86%、bad の 83% が節の最後尾に出る。-ly 形は 20〜35%。同義でも置ける場所が違う。
品詞タグだけで数えると slow-moving 型の複合語が slow の副詞タグの 64% を占める。本調査ではこれを分離した(複合語の内側では -ly 形は使えない)。
「裸形 ÷(裸形+-ly形)」を、意味の重なる 32 ペア(slow・quick・cheap・wrong・tight・easy ほか)でまとめた値。小さい数字は 100 万語あたりの裸形出現数。
同じ動詞の直後という同一環境で、裸形と -ly 形の実数を並べたもの。全体平均ではなく 結合ごとに見ると、選択はほぼ決まっている。棒は左=裸形/右=-ly 形の比率。ここでは形容詞タグが付いた出現も数えているので、上の表より実態に近い。
裸形は動詞句の最後尾に置かれる。-ly 形は動詞の前にも文中にも入る。同義でも 置ける場所が違うので、書き換え練習では位置まで揃える必要がある。
裸形が優勢なのは wrong / cheap / tight / loud / easy / high / straight / fast / late / short / free / flat のような特定の語と、特定の動詞との組み合わせだけ。slow・quick・clear・direct・safe・soft・sharp は -ly が 95% 以上で、裸形を書くと不自然になりやすい。
裸形は語単位ではなく結合単位で定着している。do it wrong / buy cheap / hold tight / sit tight / dig deep / aim high / fall short / cut short / set free / take it easy / go straight。ここに -ly を足すと、むしろ英語らしくなくなる。
hard / hardly・late / lately・near / nearly・most / mostly・just / justly・pretty / prettily・sure / surely・real / really・high / highly・short / shortly・free / freely・fair / fairly・wide / widely は意味が分かれている。書き換え問題の素材にすると事故になる。
文頭の文修飾(Clearly, …)、動詞の前(quickly realized)、形容詞の前(deeply concerned)は -ly 形の領域。裸形は動詞のうしろにしか出ない。学術英語で裸形が 0.5% まで落ちるのは、この位置の副詞が多いからでもある。
RB(副詞)タグが付いた出現。-ly 形も同じ基準で数えている。HYPH)の出現は別集計にして本表から除外した。slow-moving・full-time・high-quality 型は裸形しか使えず、混ぜると slow・full・clear などが数倍に膨らむ。drive slow の slow は文脈によって JJ(形容詞)と誤タグされる。全一覧の裸形実数は 下限と読むのが安全。「動詞ごとの実測」は RB・JJ の両方を数えているので、そちらのほうが実態に近い。loud の裸形の約 8 割は out loud / for crying out loud。sudden はほぼ all of a sudden。fine には文頭の間投詞 Fine, が入る。単独の副詞として自由に使えるという意味ではない。set free・cut short・fall flat・come clean・look sharp は副詞ではなく結果述語(形容詞)と見るのが普通。「-ly が入らない」という観察は正しいが、裸形副詞そのものではない。